心理臨床学専攻では、カウンセラーや心理療法士となるために必要な専門的な知識と技術を修得し、臨床心理士・公認心理師の資格を持つ人材の育成をめざしています。臨床対象が拡大化し、症例が複雑化する臨床現場で役立つ、高度な専門性と実践力を身に付けるため、きめ細かい指導体制で研究の発展をサポートしていきます。
本専攻は、財団法人日本臨床心理士資格認定協会の第一種指定大学院に指定されています。また、公認心理師受験資格にも対応しています。本学の特色であるキリスト教の精神を生かし、一人ひとりの人間の尊厳を大切にすることを第一に考え、かつ実践能力を持った「臨床心理士」・「公認心理師」を養成します。
学内実習施設としての附属心理教育総合相談センター、および本学が提携している多種多様な学外実習施設において、療育プログラムや認知行動療法を含む幅広くかつ豊富な心理臨床の実践経験を積み重ねることが可能です。
[子ども領域(発達療育・子育て支援・小児医療・不登校支援など)]と[芸術領域(描画・箱庭・身体表現・音楽など)]をはじめとする、多領域にわたる選択科目を用意しています。
実践・研究・教育経験の豊富な臨床心理学専門の教員スタッフだけでなく、医学(精神医学・小児医学)や他領域の心理学を専門とする教員スタッフの配置により、幅広い人間理解と臨床心理士・公認心理師資格取得を全面的にバックアップします。
(心理臨床学専攻修了要件)
必修科目12科目26単位、A~D群の選択必修科目から各群2単位、およびE群から学校臨床心理学特論を含む4単位以上、F群から心理実践実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのうち2科目を含む4単位以上計16単位以上、合計42単位以上を修得します。
また、自分の専門領域に合わせて心理臨床学演習(ゼミ)を履修し、修士論文を作成します。
以上の修了要件は臨床心理士受験資格要件でもあります。
なお、出願時に2年で修了することが難しいことが予測される場合には、3年間もしくは4年間の履修を希望することができます。
必修 | 臨床心理学特論Ⅰ、臨床心理学特論Ⅱ |
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臨床心理面接特論Ⅰ、臨床心理面接特論Ⅱ | |
臨床心理査定演習Ⅰ、臨床心理査定演習Ⅱ | |
臨床心理基礎実習Ⅰ、臨床心理基礎実習Ⅱ | |
臨床心理実習Ⅰ、臨床心理実習Ⅱ | |
心理臨床学演習Ⅰ、心理臨床学演習Ⅱ | |
A群 | 心理統計法特論 |
臨床心理学研究法特論 | |
B群 | 人格心理学特論 |
発達心理学特論 | |
認知心理学特論 | |
音楽心理学特論 | |
C群 | 社会・産業心理学特論 |
家族心理学特論 | |
犯罪心理学特論 | |
D群 | 精神医学特論 |
障害児(者)心理学特論 | |
心身医学特論 | |
E群 | 遊戯療法特論 |
描画・箱庭療法特論 | |
心理療法特論 | |
学校臨床心理学特論 | |
F群 | 心理実践実習Ⅰ |
心理実践実習Ⅱ | |
心理実践実習Ⅲ | |
心理実践実習Ⅳ |
<公認心理師受験資格要件科目>
資格取得カリキュラム | 授業科目名 |
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保健医療分野に関する理論と支援の展開 | 精神医学特論(保健医療分野に関する理論と支援の展開) |
福祉分野に関する理論と支援の展開 | 障害児(者)心理学特論(福祉分野に関する理論と支援の展開) |
教育分野に関する理論と支援の展開 | 学校臨床心理学特論(教育分野に関する理論と支援の展開) |
司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開 | 犯罪心理学特論(司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開) |
産業・労働分野に関する理論と支援の展開 | 社会・産業心理学特論(産業・労働分野に関する理論と支援の展開) |
心理的アセスメントに関する理論と実践 | 臨床心理査定演習Ⅰ(心理的アセスメントに関する理論と実践) |
心理支援に関する理論と実践 | 臨床心理面接特論Ⅰ(心理支援に関する理論と実践) |
家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践 | 家族心理学特論(家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践) |
心の健康教育に関する理論と実践 | 発達心理学特論(心の健康教育に関する理論と実践) |
心理実践実習Ⅰ | 心理実践実習Ⅰ |
心理実践実習Ⅱ | 心理実践実習Ⅱ |
心理実践実習Ⅲ | 心理実践実習Ⅲ |
心理実践実習Ⅳ | 心理実践実習Ⅳ |
心理実践実習Ⅴ | 臨床心理実習Ⅰ(心理実践実習Ⅴ) |
(実習時間について)
心理実践実習Ⅰ~Ⅴの総実習時間数は450時間以上とする。そのうち、担当ケースについての実習時間を270時間以上、学外実習機関における実習時間を90時間以上とする。
主要科目
Pick UP
臨床心理学特論Ⅰ
後藤
臨床心理学の歴史を紐解きながら、その理論や実践について学びます。特に他の心理学的支援との相違に焦点をあて、臨床心理学的な見立てや支援の意味、セラピストの役割などについて臨床経験豊富な臨床実践家による報告をもとに臨床センスの土台となるものを身に着けることを目標としています。
臨床心理学特論Ⅱ
岡本
臨床心理学的実践の中でも特に深層心理を扱う個人心理療法について学びます。精神分析の諸理論と現代精神分析に至る変遷およびユング分析心理学の各臨床家の理論について豊富な先行研究より紹介し、個人心理療法実践の土台を身に着けることを目標としています。
臨床心理査定演習Ⅰ(心理アセスメントに関する理論と実践)
伊丹・柴田
査定の意義、その効用と限界などについて学び、そのうえで、各種発達検査の理論と技法について実践を交えながら体験的に習得します。
臨床心理査定演習Ⅱ
岡本・田島
ロールシャッハ・テストの実施法とスコアリングおよび解釈について、および病院臨床におけるWISC等知能検査の所見の書き方や行動観察の重要性について学びます。
臨床心理面接特論Ⅰ(心理支援に関する理論と実践)
後藤・河野
カウンセリングの定義に始まり、こころの構造、カウンセラーに必要な基本態度、初回面接の進め方、カウンセリングの過程、治療(転移)関係、関連機関との連携などについて学びます。
臨床心理面接特論Ⅱ
柴田
具体的臨床事例に触れながら、留意点、諸問題に関する対応、終結のあり方などについて学びます。また、個人心理面接だけでなく認知行動療法など各種技法についても習熟します。
臨床心理基礎実習Ⅰ・Ⅱ
岡本・田島・河野
心理教育総合相談センターで実際に事例を担当するに際して必要な心構え、技能、倫理、具体的手順などについて学びます。例えば、ロールプレイを通じて個々のシチュエーションでの適切な対応を学んだり、初回面接に陪席してカウンセリングへの導入のあり方やカウンセラーの基本的態度や見立ての方法などの具体例について学びます。
臨床心理実習Ⅰ(心理実践実習Ⅴ)・Ⅱ
後藤・柴田・森本・渡邊・河野
ケースカンファレンスでは、大学院生が担当する個々の事例について、見立て、対応、過程、意義、問題点などを検討します。臨床心理士資格を有する全教員と全大学院生、研究生によって、多面的、総合的な検討を行います。インテークカンファレンスでは、教員によって行われる受理面接の報告、バウムなどについて、見立て、対応などを検討します。また、センター実習、病院実習、学校実習、療育、SST各論についてアセスメント、個別及び集団における心理支援、記録作成の仕方、家族支援、守秘義務や連携などについて学びます。
心理臨床学演習Ⅰ・Ⅱ(ゼミ)
後藤・柴田・三雲・森本・岡本
担当教員指導のもと、文献講読やディスカッション、予備調査を取り入れながら、統計解析ソフトSPSSなどを活用した調査データ解析を行い、修士論文の作成を進めていきます。
障害児(者)心理学特論(福祉分野に関する理論と支援の展開)
田島
自閉症スペクトラム障害などの発達障害に関する理解を深めつつ、集団、個別療育の理論、方法などについて学び、実際の臨床実践についての指導を受けます。
心理実践実習Ⅱ
田島・森本・後藤・河野
発達障害傾向のあるお子さん対象の療育実習です。子どもの発達状態を観察及び発達検査によって精査し、子どもの具体的な困り感を把握して、これこれらをもとに個別の支援計画を作成します。また、療育担当児童との関係づくり、保護者へのフィードバックなどについても体験し、その対応について指導を受けます。
描画・箱庭療法特論
後藤・柴田
表現の治療的意義についての基本的理解のもと、表現療法の中でも描画療法や箱庭療法の理論と方法について、実習体験や事例の検討を通して学びます。
教授伊丹 昌一 |
学校臨床心理学特論、臨床心理査定演習Ⅰ 特別支援教育、学校心理学、子育て支援、発達障害児・者の支援、障害のある子の保護者支援 |
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教授後藤 智子 |
描画・箱庭療法特論、臨床心理面接特論I、 スクールカウンセリング、子育て支援、描画療法、児童・思春期・青年期の心理臨床 |
教授三雲 真理子 |
認知心理学特論、音楽心理学特論、 音楽活動や運動・創作活動等による認知的・心理生理的介入効果の検討、音声・表情・感性(感情)研究の臨床への応用 |
教授瀧本 優子 |
心理実践実習Ⅳ 精神保健福祉・ソーシャルワーク実践・SST(Social Skills Training) |
教授柴田 由起 |
臨床心理実習Ⅰ,Ⅱ、臨床心理面接特論Ⅱ、 描画療法、コラージュ療法、児童期思春期の心理臨床、学校臨床 |
准教授大芝 宣昭 |
心理統計法特論 霊長類(ニホンザル・チンパンジー・ヒト)における系列学習の比較、ニホンザルによる将来の |
准教授岡本 智子 |
臨床心理基礎実習Ⅰ、遊戯療法特論、 心理療法におけるセラピストの想像活動、深層心理学、夢分析 |
准教授森本 美奈子 |
臨床心理学研究法特論、 認知症患者と介護家族への心理教育介入、精神的回復力や自己成長力と |
准教授福井 斉 |
社会・産業心理学特論 自尊感情、産業組織心理学(集団間葛藤が個人的・集合的自尊感情に及ぼす影響、 |
講師田島 真知子 |
障害児(者)心理学特論、発達心理学特論、 障がい児(者)の特徴や支援方法(発達障がいや知的障がいを中心に)、早期療育の重要性、 |
講師渡邊 力生 |
臨床心理実習Ⅰ,Ⅱ 動物病院での飼い主の心理的ケア、人と動物の関係学、アニマルセラピー、学校臨床 |
講師河野 一紀 |
臨床心理実習Ⅰ,Ⅱ、心理実践実習Ⅰ,Ⅲ、 ラカン派精神分析、青年期の心理臨床、学生相談 |
私は、臨床心理士を目指し、大学院に進学しましたが、私が本学に入学してよかったと思うことの1つとして、充実した実習体制があります。1年目からSST(ソーシャルスキルトレーニング)や療育、プレイセラピーや個人面接など相談センターにおける事例担当、発達検査など実践を積むことのできる機会が豊富に用意されています。私は学部が心理学専攻ではなかったため、心理相談センターに来られるお子さんやクライエントさんなどと関わる上で、どのように考え、関わればよいのかわからないことがたくさんありました。しかし、授業や普段からの関わりを通して、先生方や先輩方、同期の仲間に話を聞いてもらい、たくさんの意見や視点をいただくことができました。そこからさまざまな気づきを得て具体的な関わり方を学ぶことができ、少しずつ心理士としての見方や実践力を育んでいるのを実感しています。
また、本校では精神科や小児科の医師、学校巡回をされている先生など、幅広い領域で活躍されている先生方からも様々な専門知識や現場の声を聞くことができ、そのことも貴重な学びとなっています。 正解というもののない心理に携わる日々の中で悩み迷うことがたくさんありますが、いつも力になってくれる心強い先生方や切磋琢磨し合える仲間達と共に、経験を積み、人間として心理士として成長していきたく思っています。
私は、大学を決める進路選択のタイミングで臨床心理士という職業を知ったことをきっかけに心理士になることを目指し始め大学を卒業後、大学院に進学しました。
大学院は、主に学部で学んだ内容をより深めた座学に加えて、病院実習、学校実習、SSTや、療育、プレイセラピーなどの実習で構成されています。本学の特徴としては、実習体制が充実しているため、先ほど挙げた実習以外にも、発達検査や面接の同席など多くの実践的な体験を経験することができ、1年目から座学だけでは学ぶことのできない多くの事を学び、身に付けることができます。学びを深める楽しさや実践ゆえの難しさを感じながらも、心理士という職業について見つめなおし知っていく時間になっているなと実感しています。
学びを深める中で、悩み不安になることもありますが、本学は、先生や先輩、同期の仲間との距離が近く、アットホームな雰囲気が感じられるため外部生であってもすぐに相談のしやすい環境が整っているなと感じています。このような環境を大切にしながら、学び続ける努力を惜しまず、自らが望む目標を達成できるように成長していきたいと思います。
臨床心理士を目指し、大学院へ進学しました。大学院では得るものが大変多く、想像以上にとても充実した濃い2年間を過ごすことができました。学部の時よりも深く心理臨床を学ぶことができるのはもちろんのこと、自らの心に向き合い、心や身体の全体に意識を巡らせて、実体的な経験を通して学ぶことの重要性を実感しました。
本大学院の強みである充実した実習体制において、教育・医療・福祉の3領域全てに携わることができ、実際の現場で臨床心理士としての姿勢やスキルを学ぶことができました。また、1年目から多くのケースを持たせて頂けるため、カウンセリング技術等を身につける経験を積むこともできました。どの実習も決して楽なものではありませんでしたが、座学では学ぶことのできない本当に貴重な体験でした。
楽しいこともたくさんありましたが、上手くいかないことや自分と向きあう過程での悩み・苦しみも少なくはなかったです。それを幾度となく乗り越えられたのも、また、臨床心理士および公認心理師といった二つの資格を取得することができたのも、親身にサポートしてくださる先生方や同じ志をもち、思いを共有できる同期の支えがあったからこそです。大学院で学んだこと・得たものを胸に、これからも日々勉強に励み、心理士として精進していきたいと思います。
本学心理教育総合相談センターは、2004年2月梅花学園豊中キャンパス内に大学院附属施設として開設して以来、相談機関として地域に貢献して参りました。北摂地域をはじめとして広く近畿全域の医療機関や教育機関からの紹介で相談に訪れる方も多く、子どもさんから大人の方まで、幅広い年齢層の方々からのご相談に応じています。 2011年度より、主にうつ病による休職者対象の認知行動療法のプログラムもはじまりました。
また、自閉症などの発達障がいに対して早期から適切な対応をしてほしいという、利用者の皆様のご要望にお応えするべく、発達支援・子育て支援などの子どもの心理臨床のための独立施設として、2008年4月に分室が茨木キャンパス内に開設されました。茨木分室は、中学生以下の子どもさんとその保護者の方々を対象とする、子ども専門の相談センターであり、前述の発達障がいに対する個人・集団療育はもちろん、不登校など、その他さまざまなご相談に応じて、遊戯療法、音楽療法や親面接を行っています。そして、2015年2月より豊中分室と茨木分室を統合し、梅花女子大学大学院 心理教育総合相談センターとして心理的な諸問題により包括的に取り組む体制をスタートさせました。
このように本学では、社会の要請をいち早くとらえ、面接や療育によりよく反映させることができるような、地域に開かれた専門機関としての発展をめざしています。そのために、こころの専門家としての立場をつねに真摯にわきまえ、どのような方々にも対応できるオールマイティな人材を育成しています。
活動実績
大学院生年間担当件数