「まるであなたは風とともにやってくる。
あなたがいらっしゃるとき、
いつもこのすだれがふわりとそよいでしらせてくれるのですよ」
風ニ混ジル想イ人ノ香リ
「ふふ、馬鹿なことをとお思いですか?
こればかりは真剣にあなたに恋をしているのですから仕方ありません。
女の恋心というのはそういうものですから」
風ガ運ブ好キナ人ノ足音
「あなたを恋しく思っていると、秋風がぴゅうと吹いていきます。
あなたがいらっしゃるという予感に、
わたくしの心もまた、この吹かれたすだれのように密かに躍るのですよ」
分カラナイ筈ガ ナイ
君待つと 吾が恋ひをれば 吾がやどの
簾動かし 秋の風吹く
(万葉集巻四 四八八 及び 巻八 一六〇六)
「ほら今日も。
だからわたくし、ちゃんとここでお待ちしておりましたでしょう?」
もう片方の姿をイメージしてみる
ふたつの姿をイメージできた