R高校の星屑祭りは文化祭とその街の祭りをかねているので、とても、大きな有名な祭りとなっている。その祭りでは、皆が浴衣を着て参加する事となっていた。
もう、その祭りも終わり、静まりかえった午後十一時頃、このR高校の学生である飛高和葉(十七歳男)は制服で学校内を歩いている。なぜ、今頃歩いているかというと、彼は生徒会長で、今まで学校に残って仕事をしていたのだ。浴衣を着ていないのは、会長の仕事をするのに動きにくかったからという理由からだった。

 今現在、帰ろうと廊下を歩いているところである。いつもと同じように歩いていると、突然電気が消えた。この学校の校舎はとても古いので、時々そういうことが起こる。ため息をつき、和葉はスイッチに手を伸ばし、つける。・・・が、電気はつかなかった。そのまま諦めて和葉は歩いた。窓の外には黒い闇と白い月が出ている。木造の茶色の木目を月明かりが照らしていた。その様子に和葉は、
「電気がない方がいいかもな」
 そう独り言を言って歩く。と、その時、何かが泣くような声が聞こえた。和葉は気になってそちらの方へむかう。そこには浴衣を着て何かを一生懸命捜しているらしい幼い男の子がいた。それを見て和葉は一瞬、この高校の七不思議の一つ、゛すすり泣く声というのを思い出したが、(あれは女の子だったか)と思い直し男の子に近付く。
「おーい、どうした?」
 和葉の一言に男の子は顔を上げる。大きな目からは大粒の涙がこぼれつづけ、ずっとしゃくりあげてた。
「あーあ、涙でぐしゃぐしゃになって・・・・。はい、これでふいて、・・・大丈夫だからな。・・・でどうした?」
 男の子の顔をもっていたタオルでふいてやり、なだめるように和葉は頭をなでてやる。和葉に驚いた男の子はまた泣き出してしまったのだった。
「・・・どうしたんだ? 一体・・・」
 やっと落ち着いた男の子に和葉は声をかける。
「・・・あごで・・・、・・・かぎ・・・ここ・・・おとし・・・、・・・」
 泣きやみははしたが、しゃくり上げるのはおさまっていないらしく、ひっくひっくと間に混じりながら男の子は言った。
「・・・かぎ・・・ねぇ。それってどこの?」
「いえの・・・」
「あー!?、泣かないのって、お兄ちゃんも捜してやるから」
 不安になって泣き出しそうになっている男の子に和葉は慌てて言う。すると男の子は、泣くのをぐっとこらえた。
「・・・ところで、お名前は?」
 かぎを探しつつ、和葉が男の子に聞く。
「かずくん!!」
 ニッと笑って男の子が言う。
「・・・そっか、かずくんか・・・。お兄ちゃんも小さい頃゛かずくんって呼ばれてたんだよな・・・」
 昔を思い出した為、和葉の動きが止まってしまう。かずくんは
「捜してぇ!!」
 泣きそうになりながら、和葉に言ったのだった。
夜が明けて空がだんだん白んできた頃、和葉は眠ってしまったかずくんを背負って歩いていた。右手に自分のかばん、左手に探し出した小さなかぎを持ち、ゆっくり和葉は歩く。太陽の光が差し込んで来た時、背中のかずくんが目を覚ました。
「・・・ん・・・?」
「起きたか? ほら、これだろ」
 起きたかずくんにかぎを見せて渡してやる。すると、かずくんはそれをうけ取ると嬉しそうに笑った。
「ありがとう。お兄ちゃん」
「迷わず、帰れよ。和葉」
 礼を言うかずくんに、和葉はそう言ってやる。
 すると、かずくんは驚いた顔をして・・・星屑のように消えたのだった。