本年の3月からぽつぽつとこのプログを始めました。
先輩ブロガーの皆さんにいろいろとお教えいただき、入試センターの担当の方々にもなにかとお世話をおかけいたしました。思わぬ時にお読みいただいた方から励ましのお声をかけていただき、力をいただきました。コメントをお寄せいただいた方々、情報を送って下さった方々には、助けていただきました。皆様、本当に有り難うございました。現在のところ14588件のアクセスをいただきました。
毎日書き続けることはできませんでしたが、日数分だけは書き続けてみました。児童文学科の様子をお伝えすることを第一としましたが、なかなか全ての情報をお伝えすることはできませんでした。どうしても自分が関わっていることが多くなってしまいました。児童文学や絵本についての情報もお伝えしたかったのですが、まだまだほんの少ししかお伝えできていません。私の関わっている近代以前日本児童文学やその周辺の文化についてもその時その時で関心を持った事々を書かせていただきました。卒業生や在校生の活躍ぶりも紹介したいと思い、いろいろと情報を寄せて下さるようになって、有り難いことと思っています。もっと皆さんへ発信できればと思っています。どうぞ今後もご協力下さいますようお願いいたします。
私個人としては、毎日文章を書くことを9ヶ月余続けてみると、「継続は力なり」ということばを思い起こします。大した文章を書いているわけではないのですが、「ちりも積もれば山となる」ということで、書く楽しみも湧いてきます。現在、卒論や卒制、レポートに力を注いでいる皆さんも、書くことの魅力に接しておられるのではないかと思います。「書く」ことには「読む」「話す」「聞く」とは違った魅力があるようです。今しばらく、書き続けてみたいと思います。
本年は大変お世話になりまして、ありがとうございます。来年もよろしくお願いいたします。皆様、よい御年をお迎え下さい。
加藤康子さんのブログ
本年も大変お世話になりました 2006年12月31日(日)
「スガンさんのやぎ」 2006年12月30日(土)
本棚に、昔買っておいた『風車小屋だより』(ドーデー作、桜田佐訳、岩波文庫、1980年刊、第54刷)を見付けて、パラパラめくって、「スガンさんのやぎ」を読んでみました。昔読んだ覚えがありますが、すっかり忘れていました。懐かしくて、読んでみました。こんな話だったのかと思い、ずいぶんいろいろなことが詰まっている話だと思いました。
自由を求めてスガンさんの家を飛び出してしまったやぎは、自由に野原や山を堪能しますが、最後には恐ろしい狼に襲われて、抵抗はしたものの食べられてしまうのでした。この話を語り手は、抒情詩人ピエール・グランゴアール氏にパリの大新聞の記者になるように勧め、スガンさんのやぎみたいになってしまうよと、話をするのです。
美しい自然の摂理、人間社会の仕組みを暗示されるところが昔よりもぐっと迫ってくる気がしました。翻訳ですが、ドーデの語り口調がさらにぐいぐいと近づいてくる感じでした。
ドーデは『月曜物語』の「最後の授業」が有名で、教科書にも載っているのでご存じの方も多いかもしれません。本棚には『月曜物語』(大久保和郎訳、旺文社文庫、昭和53年刊、第17刷)がありました。「最後の授業」が冒頭にあり、歴史的奔流の中で戦ったドーデの体験が凝縮されたという短編が多数収められていました。
ドーデの「スガンさんのやぎ」とは異なりますが、自然の摂理に従い、人間の社会の仕組みの中で、親子の情、家族の絆を描いた映画を先日見ました。美しい映像でした。中国映画「山の郵便配達」(原題/那山 那人 那狗)です。監督はフォ・ジェンチイ氏。出演は、トン・ルゥジュン/リィウ・イェ/ジャオ・シィウリ/ゴォン・イエハン/チェン・ハオ /リ・チュンホア/ヤン・ウェイウェイ/ダン・ハオ/ホァン・ウェイ/ワン・ユイなど。1999年製作。93分。1999年中国金鶏賞(中国アカデミー賞)2部門受賞。1999年モントリオール映画祭観客賞受賞。2000年インド国際映画祭銀孔賞(審査員大賞)受賞。
妾馬 2006年12月29日(金)
「妾馬(めかうま)」という落語があります。殿のお目にとまった長屋のお鶴が御殿にあがり、お世継ぎを産みます。兄の八五郎は、がさつな男ですが、御殿様とお鶴の方に目通りを許されて会いに出かけます。その後、八五郎は武士に取り立てられるのです。先日、入船亭扇遊師の語る「妾馬」を聞きました。熱の入った、それでいて細やかでさらっとしていて、いい話でした。
がさつな八五郎は御殿様の家来の三太夫に、細かく口のきき方を指示されますが、さっぱりうまくいきません。気にしないで話すようにと、御殿様の許しを受けてすっかり気楽になった八五郎が久しぶりにあった妹のお鶴の方にしゃべりかけるところがクライマックスでした。
身分の全く違うところに出世して、行き来もままならない妹に、生んだ赤ん坊をお袋にも見せてやってくれと言うくだりは、なかなか聞かせます。「妾馬」の中では時代劇のように、兄妹の情愛や母親の気持ちを察する八五郎の人情が、しみじみと伝わってきます。でも、現代に生きる私には、身分差のある「妾馬」の時代の矛盾がじわじわと感じられます。
現代に生きる私たちにわかるように扇遊師は語っています。落語という芸は、会話を演じ、目の前で起きているかのように描いていくのだということを、いまさらですが、はっきりと感じられました。すごいなあ、と思いました。そして、会話が醸し出すしみじみとした情感の中に、乗り越えられない身分差やそこに生じる悲しい嫌なことが胸に迫って来ました。
話題の韓国映画「王の男」は、暴君の前で怯えながら芸に命をかける芸人を描いています。落語とは全く別物で、国も時代も異なりますが、身に付けた芸を磨き、それを人前で演じ、その芸の力で生計を立てるというプロの芸人が持つ凄さを、映画からも落語からも感じさせられました。
日本女子大学との交流授業 2006年12月28日(木)
12月14日に、日本女子大学の児童学科と本学の児童文学科の間で、インターネット通信の双方向システムを使ったゼミが行われました。
今秋、日本女子大学と梅花女子大学では、生涯学習の公開講座として、日本女子大学学長の後藤祥子先生の「古典逍遥」、梅花女子大学学長の中村元保先生の「ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』」の2つの講座がこのシステムを利用して行われました。開学以来のご縁のある日本女子大学には、児童学科に百々佑利子先生と石井光恵先生がおられます。今回は、両先生と三宅興子先生が、それぞれの学生、院生の皆さんと準備を進めて下さり、『ブラッカムの爆撃機』についての合同ゼミとなりました。私も参加させていただき、皆さんの発表や討論を聞かせていただきました。この記録はいずれ報告させていただきたく思っておりますが、興味深い充実したゼミだったことをまずはご報告させていただきます。
なお、テキストにしたのは、『ブラッカムの爆撃機』(ロバート・ウェストール作、金原瑞人訳、宮崎駿編、岩波書店、2006年刊)です。ロバート・アトキンソン・ウェストールは、1929年にイギリスに生まれた作家です。美術を専攻していたのですが、一人息子のために書いた「“機関銃要塞”の少年たち」でカーネギー賞を受賞します。美術教師と作家の活動を両立させ続け、「かかし」でカーネギー賞、「禁じられた約束」でシェフィールド児童文学賞、「海辺の国」でガーディアン賞を受賞するなど、現代イギリス児童文学の代表的な作家。1993年に亡くなりました。この本には、ウェストールの「ブラッカムの爆撃機」の他に、「チャス・マッギルの幽霊」、「ぼくを作ったもの」が収められています。さらに、「ウェストールの作品は、この酷い世界と戦い続ける勇気と失われたものへの愛惜に満ちていて、すてきです。」(帯のコピー)とウェストールを高く評価している宮崎駿氏が、カラー描き下ろし「タインマスへの旅」を前編と後編に分けて加えています。宮崎駿氏には、「紅の豚」というアニメーション作品がありますが、そこに込められた思いも相通ずるものだったのかもしれません。また、リンディ・マッキネルが「ロバート・ウェストールの生涯」を特別寄稿として執筆しています。野沢佳織氏の訳で読むことができます。
卒論・卒制に取り組んでいる皆さんへ 2006年12月27日(水)
児童文学科の4年生は、現在卒論・卒制の追い込み中だと思います。もちろん、他学科の皆さんも同じでしょう。師走も押し詰まったこの時期は、卒論・卒制の最後のまとめと清書の期間になります。相談にのったりすることもよくあります。集中してまとめているときの不安感は、私も想像がつきます。原稿の締切に追われ、はらはらどきどきしながら、眠気と戦いつつパソコンに向かっているときの気持ちに、おそらく同じなのではないでしょうか。なぜ、もっと早くにやれなかったんだろうか、もっと時間が欲しい、そんな思いにとらわれているのかもしれません。
でも、今日いいことばを聞きました。「今より新しい時はない」ということばです。今からの時間を最大限に利用し、できることを確実にやることで、必ず仕上げるぞと強く思うことが、きっと自分の力を引き出してくれることでしょう。
卒論・卒制の提出期間は、1月9日?13日です。4年生の皆さん、あと一歩です。
本を読む人 2006年12月26日(火)
JR京都線に乗っていました。ものすごく混んでいたわけではありませんが、席はなく、立っている人もかなりいました。ふと気がつくと、あっちでもこっちでも本を読んでおられます。電車の中で本を読んでいる人は少なくありませんが、今日は年末の慌ただしい中で、静かに真剣に読みふけっている方々が印象的でした。
インターネットが便利な世の中で、最近は家に本を置かずにインターネットで本を読む人が増えているようです。先日、絵本の読み語りに学生の皆さんが行かせてもらっているT小学校の先生とお会いした折、そのような話が出ました。確かに便利ではあるのですが、本を手にして、ページをめくり、文字を追い、絵を眺める体験は、本の世界を楽しむ上では意外に必要なことではないかと思います。
『広文庫』という便利な本があります。このことばや事物がどの本にどのように出てくるかを教えてくれる本です。主に古典を対象としています。この本を書かれたのは、国文学者の物集高見(もずめたかみ、 弘化4・1847年?昭和3・1928年)。父は国学者物集高世。明治32・1899年に勤めていた東京大学をやめた後、私財を注ぎ込んで在野の学者として研究に没頭し、貧窮の中で『広文庫』全20巻を完成させたそうです。この刊行には息子の国文学者高量も協力しました。『広文庫』を作るきっかけになったのは、同僚に依頼された文献資料を整えて教えたところ、大変驚かれ喜ばれたことだったといいます。読書家で蔵書家でもあった高見は、さらに蔵書を増やして偉大な索引ともいえる『広文庫』を完成させたのでした。現在のコンピュータやインターネットのようなものを、人の力で成し遂げたともいえます。
物集家の人々は、代々本を読むことにこだわってきたのだと思います。本を読むことは、広く奥深い世界への入口なのでしょう。
カレンダー 2006年12月25日(月)
今日はクリスマス。大学はお休みです。年の瀬も押し詰まってきました。この時期になるとお世話になっている方々から届くカレンダーがあります。お世話になっている上にカレンダーをいただくのは恐縮ですが、それぞれ素晴らしいカレンダーで、大切に見させてもらっています。少しご紹介します。
大相撲のカレンダー。日本相撲協会が作っています。表紙は国技館の取り組みを上から見下ろす雷神です。写真と絵の合成で、相撲の激しさを象徴しています。睦月・如月は朝青龍、弥生・卯月は土俵上での激しい稽古風景と呼び出し・床山の皆さん。皐月・水無月は、幕内力士と行司の勢揃い。文月・葉月は、引き続き幕内力士の勢揃いと弓取り風景。長月・神無月は、栃東・白鵬・琴欧洲・千代大海・魁皇。霜月・師走は、朝青龍と大関たち。相撲好きには楽しみな写真の数々でしょう。
浮世絵名品カレンダー。浮世絵太田祈念美術館が作っています。表紙は葛飾北斎の「雨中の虎図」。1・2月は、宮川一笑の「吉原正月の景」。3・4月は、勝川春潮の「飛鳥山花見」。5・6月は、歌川国芳の「相州大山道田村渡の景」。7・8月は葛飾北斎の「冨嶽三十六景 山下白雨」。9・10月は、歌川広重の「木曾街道六拾九次の内 三拾貳 洗馬」。11・12月は、渓斎英泉の「雪中の三美人」。
岩橋英遠のカレンダー。印刷博物館でいろいろな発信をしているTOPPANが作っています。岩橋英遠は現代芸術日本画の画家。雄大な風景を描いてきました。表紙は、9・10月と同じ。1・2月は、「山 金扇」。3・4月は、「彩雲」。5・6月は、「北辺首夏」。7・8月は、「庭石(雨)」。9・10月は、「湿原」。11・12月は、「風雪の名瀑・雪(華厳)」。
落語協会の暦。落語協会が作っています。1・2・3月は、林家木久蔵が描いた落語尽くしの絵に猪が走っている図。幾つ話がわかるでしょうか。4・5・6月は、鈴本演芸場楽屋の図。7・8・9月は、正楽歳時記。正楽は紙切りの名手。切り絵で、七夕、花火、月見が描かれています。10・11・12月は、落語協会演芸家総覧。芸人さん達の番付です。
2007年がよい一年でありますように。
ブックレビューから 2006年12月24日(日)
12月22日に触れた「森発見 Shin-Hakken 自立した森再生センター便り」No.3(独立行政法人日本万国博覧会記念機構自立した森再生センター編集・発行、2006年9月15日発行)に掲載されているブックレビューの本をご紹介します。大阪国際児童文学館の主任専門員の土居安子先生の解説が付いていますので、ご覧になっていただければ幸いです。
『もりのえほん』安野光雅絵、福音館書店
『ルフランルフラン』荒井良二作、プチグラパブリッシング
『森からのてがみ』N.スラトコフ著、松谷さやか訳、あべ弘士絵、福音館書店
『月の森に、カミよ眠れ』上橋菜穂子著、偕成社
『〈ヤギ〉ゲーム』ブロック・コール著、中川千尋訳、徳間書店
どれも森の持つ意味を考えさせてくれる魅力的な本です。
本の世界を子どもに伝えたい 2006年12月23日(土)
先日、非常勤講師で来ていただいているS先生から、ご連絡がありました。播磨町立図書館で、クリスマスの催し物があり、絵本の読み語りやお話し会などの企画をしてもらえないかというお話があったとのことでした。そこで、今年から始まった児童文学・絵本センターの窓口を通して、実際に取り組んでみたい方々がいないか声をかけてみました。時間が限られていたため、充分な広報はできなかったのですが、今年の活動の成果から、卒業生や在校生の中から、意欲を持って取り組んでくれる方々が、「梅花おはなし便サークル」を中心にして集まりました。
本日の2時と3時に2公演を行いました。子どもが43人、大人が18人参加され、小さい子どもたちは真剣にお話に聞き入ってくれたとのこと。見ている図書館の方々も楽しく思って下さったそうです。機会があればまたお願いしたいという有り難いことばを館長先生からあったと聞きました。嬉しい限りです。「梅花おはなし便サークル」の中心のYさんも、とてもあたたかい雰囲気で迎えていただき、楽しく終えることができたと喜んでいるとのことでした。紹介して下さった鈴木先生も喜んで下さいました。
先日、12月16日にも、生涯学習センター主催のクリスマスのイベントの中で、絵本の読み聞かせがあり、児童文学・絵本センターを窓口として集まった卒業生・学生の皆さんが、楽しい時間を作ってくれました。
今年は、こうした読み聞かせ、読み語り、お話し会などの活動をあちこちで実施することができ、児童文学科の在校生や卒業生が、のびのびと取り組んでくれました。充実した成果であり、今後への足がかりになるものと思います。活動された方々は、本の世界を子どもに伝えたいと思う気持ちを実践することの楽しさを手にしたのでしょう。
大野寿子先生の講演 2006年12月22日(金)
大野寿子先生をお招きして、「グリム童話と森」と題して講演をしていただきました。グリム兄弟の幅広い学問とその思想を踏まえて、緻密なグリム童話の研究を重ねてこられた大野先生のお話を、わずか90分で伺うのは無理ですが、その一端に触れられればと考えて、このタイトルのお話を「近代以前日本児童文学講読」の受講生にしていただくことになりました。ちょうど、森の存在に関心を持たれていたK先生も授業の一環として学生達に大野先生のお話を聞かせて下さることになり、院生やその他の希望者も含めて、60人あまりの人々がお話を聞くことになりました。
ドイツのグリム兄弟に関わる地域の写真などを見せて下さりながら、グリム兄弟のわかりやすい説明をして下さるところからお話は始まりました。まずは、一般には「グリム童話集」と言われているものの原題が『子どもと家庭のためのメルヒェン集』であることに触れ、「メルヒェン」の示す意味と、私たち日本人が抱いている「メルヘン」のイメージについて説明をされました。明確な説明と鮮やかなドイツ語に引き込まれていきます。
グリム兄弟、特に兄のヤーコプ・グリムがどのような姿勢で学問をしてきたのか、何を求めていたのか、その時代はどのようなものだったのか、そして、森とはどのようなものだったのか、とお話は展開していきます。こうしたことを踏まえてグリム童話を見ていくと、この話を採集したときの、そして再話してたときのグリム兄弟の思いが垣間見えるようでした。
講演の後、今年ヨーロッパ児童文学研修旅行に参加していた学生が先生を囲んで、ドイツの森や建物の写真を見せていただきました。また、茶話会が開かれ、話はつきませんでした。お帰りの時に、「森発見 Shin-Hakken 自立した森再生センター便り」No.3(独立行政法人日本万国博覧会記念機構自立した森再生センター編集・発行、2006年9月15日発行)をいただきました。「特集 児童文学にみる森」で「イーハトーブの森」(遠藤純氏著)と共に大野先生の「メルヒェンの森」が掲載されています。今日の話と同じ事を書いているんですよ、とのこと。また、大阪国際児童文学館の土居安子氏が森に関わるブックレビューを書いておられます。「児童文学と森」を考えるのに魅力的な資料でした。
帰り際、大きなツリーに灯がともり、大野先生も楽しげにその大きな木を見て下さいました。


